中小企業がメディア露出で認知度・売上を伸ばすプレスリリース活用戦略
中小企業にとって、限られた予算とリソースの中で自社の認知度を高め、集客や売上につなげることは重要な課題です。広告出稿にはコストがかかり、効果測定も容易ではありません。このような状況において、費用対効果の高い施策の一つとして注目されるのが「プレスリリース」の活用です。
プレスリリースは、企業が発表したい情報をメディアに向けて公式に発信する文書です。適切に活用することで、多くの人に情報を届け、信頼性向上やウェブサイトへの流入増加といった効果が期待できます。ここでは、中小企業がプレスリリースを効果的に活用するための具体的な戦略と手順、そして必要な準備について解説します。
プレスリリースが中小企業にもたらすメリット
プレスリリースは、単に情報を伝えるだけでなく、中小企業にとって様々な利点を提供します。
- 低コストでの情報発信: 広告費用と比較すると、プレスリリース作成や配信にかかるコストは比較的低く抑えられます。自社で作成・配信すればほぼ無料、配信サービスを利用しても広告より安価な場合が多いです。
- メディア掲載による信頼性向上: テレビ、新聞、雑誌、Webメディアなどに情報が掲載されることで、企業や商品・サービスの信頼性や権威性が高まります。これは、広告では得られにくい効果です。
- 幅広い層へのリーチ: メディアを通じて情報が拡散されるため、自社の顧客層だけでなく、これまで接点のなかった層にも情報を届けることが可能です。
- ウェブサイトへの流入増加: プレスリリースがメディアに掲載されることで、記事から自社ウェブサイトへのリンクが貼られたり、関心を持った人が検索したりして、ウェブサイトへのアクセス増加が期待できます。
- 広報資産の蓄積: 掲載実績は、自社の信頼性をアピールするための資産となります。ウェブサイトに掲載したり、営業資料に利用したりすることが可能です。
これらのメリットは、予算や知名度で大手企業に劣る中小企業にとって、競争優位性を築くための有効な手段となり得ます。
プレスリリースの題材を見つける
中小企業の場合、「うちにはプレスリリースにするような大きなニュースはない」と考える経営者の方もいらっしゃるかもしれません。しかし、必ずしも画期的な新商品や大型提携である必要はありません。中小企業ならではの視点や地域密着型の取り組みなど、様々な題材が考えられます。
具体的な題材の例としては、以下のようなものが挙げられます。
- 新商品や新サービスの開発・発表
- 既存の商品・サービスのリニューアル
- 新たな技術や取り組みの導入
- 地域貢献活動やCSR活動
- 業界のトレンドや社会課題に対する独自の取り組み
- イベントやセミナーの開催
- 受賞や認定、メディア掲載実績
- 自社の記念日や節目の活動
- 社内のユニークな制度や働き方
- 季節限定の商品やサービス
重要なのは、「誰に」「どのような情報を伝えたいか」を明確にし、その情報にメディアや社会が関心を持つ可能性があるかという視点を持つことです。特に、社会的な話題やトレンドと結びつけたり、具体的な数字や独自性を盛り込んだりすることで、メディアの興味を引きやすくなります。
プレスリリース作成の具体的な手順
実際にプレスリリースを作成する際の手順を解説します。分かりやすさと正確性が重要です。
- 目的とターゲットの明確化: なぜプレスリリースを出すのか、誰に(どのメディアのどの記者か、その先の読者・視聴者は誰か)情報を届けたいのかを明確にします。これにより、記載する内容やトーンが決まります。
- 構成案の作成: プレスリリースの基本的な構成要素を整理します。
- タイトル: 簡潔で内容がすぐに分かるように、最も伝えたいことを盛り込みます。
- サブタイトル: タイトルを補足し、詳細を説明します。
- リード文(見出し): プレスリリースの要約。5W1H(When, Where, What, Why, Who, How)を盛り込み、これだけ読めば全体像が掴めるように記述します。
- 本文: リード文で示した内容の詳細を具体的に説明します。背景、経緯、特徴、独自性、展望などを分かりやすく記述します。専門用語は避け、必要なら簡単な補足説明を加えます。箇条書きや小見出しを活用し、読みやすく構成します。
- 図表・画像: 商品やサービスの画像、グラフ、組織図など、視覚的に理解を助ける資料を添付します。画像の質は非常に重要です。
- 会社概要: 会社名、所在地、代表者名、事業内容、設立年月日などを記載します。
- 問い合わせ先: 部署名、担当者名、電話番号、FAX番号、メールアドレス、ウェブサイトURLを正確に記載します。メディアからの問い合わせに迅速に対応できる体制が必要です。
- 配信日: いつ情報公開が可能かを示します。
- 本文の執筆: 構成案に基づき、丁寧に執筆します。客観的な事実に基づいて記述し、過度な主観やPR色の強い表現は控えます。メディアの記者が記事化しやすいように、正確で分かりやすい文章を心がけます。誤字脱字がないよう、複数人で確認することが望ましいです。
- 画像・資料の準備: 高解像度で、プレスリリースの内容を適切に伝える画像や図表を用意します。
- 最終確認: 内容に誤りがないか、連絡先は正確か、必要な情報がすべて含まれているかを確認します。
プレスリリースの配信方法とコスト感
作成したプレスリリースをメディアに届ける方法はいくつかあります。中小企業が取り組みやすい方法とそのコスト感を説明します。
- メディアリストを作成し、個別に送付:
- 方法: 自社の事業に関係するメディア(新聞、雑誌、テレビ、ウェブメディアなど)をリストアップし、広報担当者や記者宛に直接、メールや郵送で送付します。地域のメディアや業界専門誌は掲載されやすい傾向があります。
- 必要な準備: メディアリストの作成、メディアリレーション(関係構築)の努力、送付作業。
- コスト: 作成・送付にかかる自社の人件費、郵送費など。ほぼ無料での実施も可能です。
- 留意点: メディアリストの質が重要であり、労力がかかります。送付しても必ず読まれるとは限りません。
- プレスリリース配信サービスを利用:
- 方法: プレスリリース配信サービスに原稿を入稿すると、サービス提携のメディアリストに基づいて多数のメディアに一斉配信してくれます。
- 必要な準備: サービス選定、原稿作成、入稿作業。
- コスト: サービスによって料金体系は異なりますが、1回の配信で数万円〜数十万円程度が目安です。月額制や成功報酬型のサービスもあります。無料プランを提供するサービスもありますが、配信先や機能に制限がある場合が多いです。
- 留意点: 確実に掲載されるわけではありません。サービスに頼りきりではなく、自社でも個別アプローチを行うことが効果を高めます。
- 自社ウェブサイトやSNSでの公開:
- 方法: プレスリリースを自社ウェブサイトの「ニュースリリース」や「お知らせ」などのページに掲載し、SNSでも告知します。
- 必要な準備: ウェブサイト更新スキル、SNSアカウント運用。
- コスト: 自社の人件費、ウェブサイト保守費用。ほぼ無料での実施が可能です。
- 留意点: 自社の顧客やファンへの情報伝達には有効ですが、新規メディアへのリーチは限定的です。
中小企業の場合は、まず自社でのメディアリスト作成と個別送付、そしてウェブサイト・SNSでの公開から始めるのが現実的でしょう。予算があれば、無料または安価なプレスリリース配信サービスを試してみるのも良い方法です。
効果測定の方法
プレスリリース配信の効果を測定することは、今後の広報活動の改善に不可欠です。
- メディア掲載実績の確認: どのメディアに掲載されたか、記事の内容は意図通りかを確認します。Googleアラートなどのツールを利用すると効率的です。
- ウェブサイトへのアクセス解析: プレスリリース配信後に、ウェブサイトへのアクセス数や流入元(特にメディアサイトからの流入)が増加したかを確認します。Googleアナリティクスなどが役立ちます。
- 問い合わせ数・資料請求数の変化: プレスリリースに関連した問い合わせや資料請求が増加したかを確認します。
- ソーシャルメディアでの言及: プレスリリースや関連情報がソーシャルメディアでどのように話題になっているかを確認します。
- 売上への貢献: 直接的な売上増加への寄与を追跡することは難しい場合もありますが、問い合わせやウェブサイト経由の売上と関連付けて分析を試みます。
これらの指標を定期的に確認し、どのようなプレスリリースが効果的だったかを分析することで、より成果につながる広報活動へと改善していくことが可能になります。
まとめ
プレスリリースは、中小企業が低コストで認知度を高め、信頼性を構築し、集客や売上につなげるための強力なツールとなり得ます。特別なニュースがなくても、日々の活動の中にメディアが関心を持つ可能性のある題材は存在します。
まずは自社の強みや独自性を洗い出し、発信する目的を明確にすることから始めてください。そして、分かりやすく正確なプレスリリースを作成し、適切な方法でメディアに届けます。効果測定を行い、継続的に改善していくことで、プレスリリースは貴社の集客・売上UPに貢献する有効な施策となるでしょう。諦めずに、まずは一歩を踏み出すことが重要です。