予算を抑えて効果を最大化する中小企業のWebサイトCVR改善
はじめに
多くの企業がWebサイトを通じて集客や販売促進に取り組んでいます。広告運用やSEOによってWebサイトへのアクセス数を増やすことは重要ですが、それだけでは売上向上には直結しません。獲得したアクセスを、問い合わせや購入といった具体的な成果につなげる効率を高める必要があります。これがWebサイトのCVR(コンバージョン率)改善です。
特に中小企業では、限られた予算とリソースの中で最大の効果を出すことが求められます。闇雲にアクセス数を増やす施策に投資するよりも、既存のアクセスからより多くの成果を生み出すCVR改善は、費用対効果が高い取り組みと言えます。本記事では、中小企業が無理なく実践できるCVR改善の具体的なアイデアとその手順、費用感について解説します。
CVR(コンバージョン率)とは何か
CVR(コンバージョン率:Conversion Rate)とは、Webサイトにアクセスしたユーザーのうち、どのくらいの割合が目標とする行動(コンバージョン)に至ったかを示す指標です。コンバージョンの定義はWebサイトの目的によって異なり、商品購入、問い合わせ、資料請求、会員登録などが一般的です。
計算式は以下の通りです。
CVR (%) = (コンバージョン数 ÷ Webサイトへのアクセス数) × 100
例えば、1000人のユーザーがWebサイトにアクセスし、そのうち10人が商品を購入した場合、CVRは1%となります。
なぜ中小企業にとってCVR改善が重要なのでしょうか。それは、CVRが向上すれば、同じアクセス数でも売上や問い合わせ数が増加するからです。アクセス数を増やす施策は継続的なコストがかかる場合がありますが、CVR改善は一度効果が出れば、その後の集客効果を継続的に高めることにつながります。つまり、既存の投資効果を最大化する、効率的な売上向上策と言えるのです。
中小企業が取り組むべきCVR改善の基本的なステップ
CVR改善は、感覚に頼るのではなく、データに基づいて進めることが重要です。以下のステップで取り組むことを推奨いたします。
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現状分析と課題特定:
- まず、現在のWebサイトのCVRを正確に把握します。Google Analyticsなどのアクセス解析ツールを使用し、サイト全体のCVRだけでなく、特定のページや流入経路ごとのCVRを確認します。
- ユーザーがサイト内でどのように行動しているか(どこから来て、どのページを見て、どこで離脱しているか)を分析します。これにより、ユーザーが目標達成に至るまでの導線にどのようなボトルネックがあるかを特定する手がかりを得られます。
- ヒートマップツール(無料トライアルがあるものも多数存在します)などを活用すると、ユーザーがページのどこをクリックしているか、どこまでスクロールしているかなどが視覚的に分かり、課題発見に役立ちます。
- 入力フォームの完了率を確認し、離脱が多い項目などを特定します。
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改善施策の立案:
- 特定された課題に対する具体的な改善策を複数検討します。「この表現を変えたら分かりやすくなるのではないか」「このボタンをもっと目立たせたらクリックされるのではないか」など、仮説を立てます。
- 一度に多くの箇所を変更すると、何が効果的だったのか判断が難しくなります。改善施策は一つずつ、または関連性の高い小さなグループに絞って実施することを推奨します。
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改善施策の実行:
- 立案した施策をWebサイトに実装します。自社でWebサイトを管理している場合は担当者が作業を行います。外部の制作会社に依頼している場合は、修正内容を明確に伝えて作業を依頼します。
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効果測定と検証:
- 施策実行後は、必ず効果測定を行います。改善前と改善後でCVRに変化があったか、アクセス解析ツールで確認します。
- 可能であればA/Bテストを実施します。これは、元のページ(Aパターン)と改善を加えたページ(Bパターン)を同時に表示し、どちらのCVRが高いかを比較する手法です。専門ツールが必要になる場合もありますが、Google Optimize(現在は提供終了、後継としてGoogle Analytics 4の一部機能やGoogle Tag Managerでの設定などが検討可能です)のような無料または低コストで利用できるサービス、あるいは自社で簡易的に実装する方法もあります。十分なデータが集まるまで、一定期間テストを継続します。
- 効果が確認できた施策はそのまま採用し、十分な効果が見られなかった場合は、次の改善策を検討するか、施策自体を見直します。
中小企業向け具体的なCVR改善アイデア(費用感・難易度)
ここでは、比較的少ないリソースでも取り組みやすいCVR改善のアイデアをいくつかご紹介します。
1. CTA(行動喚起ボタン)の最適化
- 内容: 問い合わせボタン、購入ボタン、資料請求ボタンなどの文言、色、形、サイズ、配置場所を変更します。「送信」を「無料で資料をダウンロードする」に変更するなど、ユーザーにとってのメリットを明確にする文言が効果的な場合があります。
- 費用感: 自社でWebサイトを編集できる知識があれば、ほぼ無料(人件費のみ)。外部に依頼する場合は修正費用(数千円〜数万円程度)。
- 難易度: 低〜中。簡単なテキスト・色変更なら容易。配置場所の大きな変更はサイト構造に関わる場合がある。
- ポイント: 複数パターン作成し、A/Bテストでの比較が有効です。ページのどの位置にボタンを置くか(例:記事の最後だけでなく、途中にも配置する)も重要です。
2. 入力フォームの最適化
- 内容: 問い合わせや申し込みフォームの項目数を減らしたり、必須項目と任意項目を明確にしたり、入力例を表示したり、リアルタイムのエラー表示を導入したりします。
- 費用感: フォームツールを利用している場合は設定変更のみで無料〜月額数千円。自社で開発・改修する場合は開発工数(規模による)。
- 難易度: 中。フォームの構造変更は専門知識が必要な場合がある。
- ポイント: ユーザーは入力が面倒だと感じると離脱しやすくなります。最低限の情報入力で済むように工夫します。個人情報入力への心理的なハードルを下げる表示(例:「入力は1分で完了します」)も有効です。
3. コンテンツ・コピーライティングの見直し
- 内容: Webサイト上の文章(キャッチコピー、説明文、商品・サービス紹介文)を、ターゲット顧客の抱える課題やニーズに寄り添う内容に変更します。サービスの強みや顧客が得られるメリットを分かりやすく具体的に伝えます。信頼性を高めるため、お客様の声、導入事例、よくある質問(FAQ)、会社の信頼性を示す情報(受賞歴、メディア掲載、専門資格など)を追加・整備します。
- 費用感: 自社で実施すれば人件費のみ。外部のライターやコンサルタントに依頼する場合は内容と量による(数万円〜数十万円)。
- 難易度: 中〜高。ユーザー心理やライティングスキルが必要。
- ポイント: ターゲット顧客が「自分ごと」として捉えられるような、共感できる言葉選びが重要です。専門用語の乱用は避け、分かりやすい表現を心がけます。
4. ファーストビューの改善
- 内容: Webサイト訪問者が最初に目にする画面領域(ファーストビュー)に、誰に向けたサイトか、何を提供しているか、どんなメリットがあるかを明確に表示します。魅力的な画像や動画、分かりやすいキャッチコピー、明確なCTAを配置します。
- 費用感: テキストや既存画像の差し替えなら比較的低コスト。写真やデザインの新規制作は内容による(数万円〜)。
- 難易度: 中。デザインやコピーライティングのスキルが求められる。
- ポイント: ユーザーはファーストビューを見て数秒でサイトから離脱するかどうかを判断すると言われています。一目で価値が伝わるように工夫が必要です。
5. サイト表示速度の改善
- 内容: Webサイトの読み込み速度が遅いと、ユーザーはストレスを感じて離脱しやすくなります。画像サイズの最適化、不要なHTML/CSS/JavaScriptコードの削除、ブラウザキャッシュの活用などで表示速度を改善します。
- 費用感: 自社で対応すれば人件費のみ。専門知識が必要な場合や、外部ツール・サービスを利用する場合は費用がかかることがある(数万円〜)。
- 難易度: 中〜高。技術的な知識が必要な場合がある。
- ポイント: Google PageSpeed Insightsなどの無料ツールで現在の速度や改善点を把握できます。特にモバイル表示速度は重要視されています。
CVR改善における注意点
- 一度に大きく変更しない: 複数の箇所を同時に変更すると、何がCVR向上に貢献したのか、あるいは悪化させたのかが分からなくなります。一つの仮説に基づいた小さな変更から始め、効果を測定することを推奨します。
- データに基づいた判断: 個人の好みや感覚ではなく、アクセス解析データやA/Bテストの結果に基づいて改善の判断を行います。
- 継続的な取り組み: CVR改善は一度行えば終わりではありません。ユーザーの行動や市場環境は常に変化するため、継続的に分析と改善を繰り返すことが重要です。
まとめ
WebサイトのCVR改善は、既存の集客努力を最大限に活かし、費用対効果高く売上や問い合わせを増加させるための有効な施策です。中小企業でも、Google Analyticsなどの無料ツールを活用した現状分析から始め、CTAの最適化や入力フォームの改善といった比較的取り組みやすい施策から着手できます。
成功のためには、データに基づいた課題特定、仮説に基づいた施策実行、そして効果測定と検証のサイクルを回すことが不可欠です。ぜひ本記事で紹介したアイデアを参考に、自社のWebサイトのCVR改善に取り組んでみてください。継続的な改善活動が、持続的な集上・売上向上につながるはずです。